16FLIPS gkeisuke’s diary

16小節の長い話

シュレディンガーの平沢唯

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「同じ大学の平沢唯さん」と出会ったのは、大学1年の秋、基礎演習のクラスを発表するための貼り紙だった。

私が大学1年生のころというと、2010年のことである。

そう。ちょうどテレビアニメ「けいおん!!」の放映が終了した、あの頃のことだった。

かきふらい先生の「けいおん! college」が連載され始めたこともあり、運命的なものを感じると同時に

もうその時には、けいおんという作品は私にとってかけがえの無いものへと変わりつつあった。

「もしかしたら、本当に唯ちゃんが同じ大学に入学して、同じ学部・同じ学科で、同じ時間を過ごしているのかも知れない」

そんなあるわけの無い夢想が「ひょっとしたら本当かもしれない」という可能性を、なんとなく心のどこかに取っておきたかった。

それは確認してしまえば、一瞬でなくなってしまうものだとはもちろん知りつつ

そして仮に本当だったとして、お前は一体どうするつもりなんだという自問自答をしつつ。

そうしてついに「平沢唯」さんとは一度も顔を会わせることなく、私は大学生活の4年間を全うした。

どうやらゼミの友達には知り合いが居たらしいという話も聞いたし、サークルの後輩は同じゼミだった。

全くどこにもつながりが無かった訳でもなかった。

卒業式の後、ゼミの友人たちと居酒屋で飲み会をしている時に、アルバムをめくっていると

「あー!!!!!そのページは見たらアカン!!!!!」

と、言われて一瞬何のことか分からなかったが、名前順の「は」から始まる人たちのページだと気づいてハッとした。

同じ学年、同じ学部、同じ学科なので、当然私と同じ卒業アルバムにも写真が載っているのだ。

なんとなく、未だにそのページは見れないでいる。

小学校のときはにやけてて、中学のは緊張しすぎ。そして高校の時は前髪を切りすぎてしまった唯ちゃんの卒業アルバム。

この二人の「平沢唯」さんに、私は「けいおん!」という物語と放課後ティータイムの5人が、今でもどこかで生き続けているんじゃないかという心の中の期待を、託していたのかもしれない。

けいおん! college」「けいおん! highschool」で、かきふらい先生が、先生なりの答えを示してくれたように、私も私なりの答えとよりしろをどこかに求めていたのだろう。

私の場合は、勝手にこじらせていただけだから「平沢唯」さんには実害はない(はず)けど、奇跡的にこの名前で、この世代だと、もしかしたら色々と話題を振られて、気疲れしてしまっていただろうなーという気もする(本当にすみませんでした)し、生きる世界が全く違う人かもしれない。

そんなまだ見ぬ「平沢唯」さんに会ってみたいなという気持ちも少なからずあったけど、その可能性の中に「本当に唯ちゃんなんじゃないか」という選択肢を残しておきたい気持ちの方が勝ってしまったのだ。

「仮に本当だとしたらどうする?」という問いには、結局答えが出なかった。

ただ想像できるのは、多分軽音楽部に入るだろう彼女のステージを、客席のはしっこのほうで見守るだけの私の姿だった。

きっと、そういうことなんだろうと思う。