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「愛羅武勇より愛してる」と百合姫センパイ

漫画

愛羅武勇より愛してる

愛羅武勇より愛してる
著者:くみちょう
価格:920円(税込、送料込)
楽天ブックスで詳細を見る

「百合漫画」との出会いは一期一会である。

「百合」というジャンルは発表の場が限られており、いつそれが無くなるかが分からないからだ。

また、決して漫画コーナーの花形を飾るメジャージャンルというわけでもないため、陳列棚における新陳代謝が早い。

これはamazon楽天Booksなどのネットショップでも同じ現象が起こるため、入荷の絶対数自体が少なかったりもする。

だから「これは!」と感じる何かがあれば、躊躇い無く購入することにしている。

今回、私がメインで買おうと思っていたのは、今最も追いかけている百合アンソロジーである「メバエ」の最新号だった。

その中で、コミック百合姫の新刊としてみつけたのが、この「愛羅武勇より愛してる」である。

お互いがお互いの事情で友達らしい友達がおらず、これまで「好き」って感情がどんなものか分からなかった、東京から転校してきた優等生・理沙と大阪のヤンキー・かずみのおはなし。

かずみへの感情を「初めての恋だ」と自覚したからこそ、堂々と、恥じらいもなく、真正面からグイグイ「好きだ」って伝える理沙。

初めての友達と一緒にいる時間が楽しくて、大好きだからこそ、そこから一歩踏み込んでしまうと、この大切な空間が壊れてしまうのではないかと恐れてしまうかずみ。

初めてだから、大好きだから「どうするのか」というのが、一緒の解にはならなくて、お互い大好きだからこそ、恐れ合って一緒のタイミングで踏み込みあえない関係性がたまらなく愛おしい。

「愛羅武勇より愛してる」というタイトルが、ピッタリと嵌っているような気がする。

そして私はヤンキーっぽい女の子が好きだ。萌えだ。これは認めねばならない。拍子のヤンキー座りをみて、この漫画の購入を決定しました。

こういうジャンルにおいて、ヤンキーは大体受けなのだ。それは仕方ない。人類は皆誰しも喧嘩っ早くて、すぐ手が出てしまうがさつに見える子の、かわいい女の子らしい一面をみたいのだから。

詳しくはないけど、多分BLでも同じ傾向が出ているはずだと思う。

表題作が3話+番外編で終わってしまったのが非常に惜しかった。

二人が共通の解をようやく得るところでゴールなので、キレイにまとまってはいるのだけれど。

おっさんはもっといちゃいちゃして欲しかったんや……。

ただ、それを吹き飛ばすくらい、表題作とは別に短編として収録された『お腹をすかせて帰ってくるね』が、これまためちゃくちゃ素晴らしかった。

もうタイトルをみただけで、私という人間が好きな作品である事が秒で分かるだろう。

長身でバレー部のエース候補なのに、自分に自信が持てない遥という主人公の女の子と

中学時代に遥と同じチームで、いつも遥を励ましてくれていたけど、家庭の事情でバレーをやめてしまい、今は料理部で活躍している翔子ちゃんという女の子のお話。

「長身でボブカットの女の子」「自分にコンプレックスがある」「遥」「料理の話」

ようするに数え役満ですね。

そういう趣味嗜好を抜きにしても、「百合」までいかないまでも、中学~高校にかけての半ば惰性的な依存と、そこから抜け出して、今の自分たちの場所で頑張るようになるまでがさわやかに描かれている素晴らしい短編だった。

先ほど「百合漫画との出会いは一期一会」という話をしたが

表題作「愛羅武勇より愛してる」は、新書館「ひらり、」という廃刊になってしまった百合アンソロジーに掲載されていた作品。

短編「お腹をすかせて帰ってくるね」が、「ひらり、」別冊の「ほうかご!」という部活女子アンソロジーに掲載されていた作品である。

しかしこの漫画は見ていただくと分かるが「一迅社」の「コミック百合姫」から刊行されている。

「ひらり、」が廃刊になってしまい、コミックスとしては日の目を見ることなくフェードアウトしかけていたところを、出版社の垣根を超えて百合姫センパイが出版してくれたのだ。

実はこの例は珍しいといえるものではない。「ひらり、」からは他にも、「キミイロ少女」というド名作が救い上げられているし、かつて私が愛読していた「つぼみ」というアンソロジーに収録されていた漫画でも「レンアイアマンガ」という作品が、改めて百合姫から刊行されていたりする。

この目まぐるしく需要が移り変わるジャンルの中、重鎮として存在し続けるコミック百合姫は、やはり懐の深さが違う。

もちろんお金の問題とか色々あるのだろうけど、少なくとも一読者としては「こんなにいい百合漫画がコミックスにならずに埋もれてしまうのは勿体無い!もっと多くの人に読んでもらいたい!」という心意気なのではないかと感じてしまう。

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先ほど名前を挙げた「キミイロ少女」のあとがき漫画である。

百合姫センパイ、素晴らしい作品たちに出会わせてくれて、本当にありがとうございました。