ただいまといってきますの物語(プリパラシリーズ完結に寄せて)
思い返してみると、プリパラというアニメは「ただいま」と「いってきます」を繰り返す物語であったように思う
眠ってしまったファルルを目覚めさせるためにライブを実施する1stシーズン第37話は、そらみスマイル、ドレッシングパフェの6人が朝の眠りから目覚める姿から始まる。
それは、後に訪れるファルルの目覚めに対応していると同時に、プリパラの外にはそれぞれの日常があって、無事に帰ってこなくてはならない場所があることも意味している。6人の中から、主人公である真中らぁらが代表して「いってきます」を告げて、物語の幕が開く。
プリズムボイスの奇跡で目覚めたファルルに、北条そふぃが掛けた声が「おかえりなさい」であった。おはようではなく、おかえり。プリパラという場所に戻ってきたことに対する言葉だった。
2ndシーズンの87話でプリパラのシステムが暴走し、主人公のらぁら以外のアイドルが記憶を失ってしまった中、らぁらが必死にみれぃの記憶を呼び覚ました時も、らぁらはみれいに「おかえり」と声をかけ、みれぃも「ただいま」と答えた。
88話でプリパラシステムの歪に吸収されそうだったひびき、ふわり、あじみ先生を救った後、観客席からは「おかえり」という声がかけられ、あじみ先生が「ただいま」と返した。
3rdシーズン第139話は、ルール違反を犯してシステムに飲み込まれそうになったジュリイとジャニスを、神アイドルになったそらみスマイルのステージで、再びプリパラに引き戻した。
そして、4thシーズンに充たるアイドルタイムプリパラの第50話は、時間を止めて凍ってしまったパックと、その中で眠る真中らぁらが、プリパラに戻ってくる物語。
同時に、49話は長い旅路の果てに神に匹敵するだけの熱い心を持ってドレッシングパフェが帰ってくる物語で、かつて自分たちのアイドルの輝きを見出し、ずっと信じて待っていたマネージャーのウサギに3人は「ただいま」と告げた。
また51話では、パラ宿のプリパラを追放されたガァルマゲドンが、パパラ宿で幸多みちるの夢を導いて、パラ宿のアイドルたち総出で「ただいま」と迎え入れられた。
重要なのは「パラ宿に戻りたい」と願い、パラ宿でライブをするために姿を隠してまでクイズ大会に出場していたガァルマゲドンの3人を除いて、上記で挙げたのは、いずれも各年度における"最終回直前"のエピソードであったことだと思っている。
どこかに行ってしまった誰かが、プリパラという場所そのものの言い換えでもある、主人公・真中らぁらの”みんなが笑っていてほしい”という強い想いで「プリパラに戻ってくる」ことが物語の帰結にはならない。
戻ってきた後の最終回は、これまでも必ず旅立ちの物語であった。
1stシーズンの最終回でファルルはユニコンと共にプリパリへと旅に出て、2ndシーズンの最終回には紫京院ひびきがこれに続く。3rdシーズンの最終回では神アイドルとなったそらみスマイルはプリパラを広めるために、あと一歩のところで届かなかったドレッシングパフェのシオンはドロシーとレオナといつまでもユニットを続けるために、それぞれ旅に出る。
そして、アイドルタイムプリパラは、らぁらがパパラ宿から新たな街のプリパラへ旅立つのを始め、それぞれのアイドルが、プリパラで過ごした時間の中で得た夢や理想に向けて、新しい日常を歩みだす姿で幕を閉じた。
***
誰でもなりたい自分の姿になれるプリパラという場所は『夢』そのものだった。
だから、真中らぁらや、アイドルタイムプリパラの主人公である夢川ゆいが強い気持ちで救ってきたのは、いつも夢を見ることを忘れてしまった誰かや、夢を見ることが出来なくなってしまいそうな誰かだった。
そして彼女たちは、いつだってステージの上でその衝動を呼び起こしてくれる。
きっとそういう人のことを"アイドル"と呼ぶのではないだろうか。
i☆Ris / Memorial-Music Video-(Short Ver.)
いつもの"おはよう"でさえ
あたりまえじゃなくて
ステキな奇跡だったんだね
プリパラシリーズのラストを飾るオープニングテーマ『Memorial』はこんな歌い出しから始まる。
作品最初のOPにして、プリパラの世界観を決定づけるに至った『make it!』では「夢はもう夢じゃない誰だって叶えられる」と歌った。
続く1stシーズン後半のOPは、実現という意味を持つ『Realize』というタイトルで「キラキラしている自分を掴もう 大好きな事しよう」「つかみ取ろうプリパラ」と”自ら掴みとること”を歌う。
アイドルタイムプリパラには、ファララとガァララという、それぞれ昼と夜を司る時の妖精が登場する。
人は眠っている間に夢をみて、起きている間に夢を叶えていく。夜が明けて、また新しい朝が来る。そんなあたりまえの営みの中で夢を見て、それを実現するため、前に進み続ける。
プリパラがなりたい自分の姿を実現する場所だったのは、そこに留まり続けるためではない。未来の可能性を示すためだ。いつか自分が理想に追いつけるよう、なりたい自分になれるように、日々を前向きに過ごすためなのだと思う。
だからこそ、プリパラは最後まで一貫して「ただいま」と「いってきます」の物語で在り続けたのだろう。
たくさんの愛しい時間と、明日を生きるためのワクワクとしたエネルギーをもらった、大好きで大切な作品です。