16FLIPS gkeisuke’s diary

16小節の長い話

『ここんぽいぽい恋愛脳』を読んで

 

4月1日のここたまオンリーで頒布され、取り置きしてもらっていた青井さんの同人誌を、本日受け取りました。既に住所氏名などの個人情報が筒抜けとなっており、有事の際には直接来訪することも可能となっている。

 

郵送で送って頂いた魂の籠った作品には、受け取った分、少しでもお返しできるようにブログで感想を書くのが私の中でしきたりとなっている。(後ほどお代と送料はお支払いします)

 

 

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「ここんぽいぽい恋愛脳」というパンチが効きすぎたタイトルの当同人誌は『かみさまみならい ヒミツのここたま』というシリーズの二次創作小説誌。

 

取り置きをお願いしておいて何だけど、私はここたまシリーズにはほとんど触れてこなかった。豊崎愛生さんがメロリーちゃんを演じていること、全盛期はアイカツを食うレベルで女児からの人気を集めていたこと、はらひろさん、青井さんとお会いした時に聞く周辺情報などが私にとってのここたまの全てであった。ここたまハウスについての説明を聞いて「それは、つまり水曜どうでしょうで言うところの『粗大ゴミで家を作ろう』みたいなことですか?」と返していた。

 

が、青井さんも、それを十分承知の上で「早く読んで欲しい」と思って、ノータイムで私に送って下さったのだろう。それは、ちゃんと自分の中で「良いものが書けた」という自信が無ければ出来ないことだと感じる。

 

 

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Creepy NutsというHIPHOPユニットの「みんなちがってみんないい」という曲がある。

 

UMBというMCバトル最高峰の大会で、前人未到の3連覇を達成したMC・R-指定のラップスキルと意地の悪さがふんだんに詰め込まれた1曲。

 

「みんなちがってみんないい」という金子みすゞの有名な一節をタイトルに引用しながら、その実はシーンで活躍する色んなラッパーのフロウを卓越したスキルでモノマネしきることで、自分がその他大勢とは格が違うことを知らしめる、痛烈な皮肉を孕んだ曲でもある。

 

誤解を恐れずに言えば、読んでいる最中に少しこの曲のことを思い出した。

 

実は小説という形で青井さんの文章を読むのは初めてだったけど、純粋に文章が上手い。そもそも、これは文章が上手くないと成立しない方法で書かれた小説でもあった。

 

あと、デザイン面がちゃんと内容にも起因してくるオシャレなもので、視覚で訴えられる部分全てを使って表現しようという気概を感じた。個人誌ならではの部分もあるけど、これは見習わなくてはいけない部分だとも思わされた。

 

何より素晴らしいと思ったのは、全編にわたって「やりたいことは全部やる」という強力なエネルギーに満ちているように思えたことだった。多分、だからこそ書いててめっちゃ楽しかったんだろうなというのが、読んでて分かる文章だった。

 

女性向けジャンルにおけるお約束のようなものであることも理解しつつ、最初の1ページには、カップリングやキャラ改変等々に対する注意書きがある。

 

私はあの注意書きの文化が長らく理解できなかったのだけど「今から自分が思っていることをブチかますから覚悟しとけよ」という最高にパンクな意味を持つものであることを理解した。

 

頭の中には表現したい世界があって、それを紡ぐための物語があって、伝えるための文章があって、それらが1冊の本の中に綴じられる。

 

例えば、商業用に書かれた作品のような、より大勢に読んでもらうことを目的とした文章であれば話は別だろう。だけど、これは同人誌だ。自分で決めた部数だけ刷って、思うままに表して、同時にその1冊が届いた誰かに何かを受け取ってもらえるように、持てる力を尽くして「表現」をする。

 

少なくとも、私にとってはこれが同人誌を製作する根源にある感情だったよなと、改めて思い起こされた。

 

文芸部で生まれて初めて書いた小説を発表した時、ふかふか団地で初めて同人誌を作った時、一番最初にあった感情や熱量に似たものを思い出させてもらった気がする。

 

 

物語的にも、事前に聞いていた感じから割とぶっ飛んだのが来ると思ったら、改めて振り返っても、ちゃんと女児向けアニメのドタバタ話の文脈をなぞっていて、その上に色んな愛の形をオムニバス的に乗せているのがとても見事だった。

 

思うところがあったとすれば、視線誘導が激しい小説なので、人称視点が誰にあるのかを把握するのに苦労する場面がややあったかも知れない(ただ、一人称ではあるべきだとも同時に思った)。私がここたまを知らないで読んだことが原因である。

 

ここたまの小説にぶん殴られるとは思っていなかったので、今度はちゃんとぶん殴られるつもりで向かいます。今後も機会があれば、是非読ませてください。